「猪木×はぐれ国際軍団」 昭和の名勝負 |
1本目:猪木(13分3秒 逆十字固め)寺西
2本目:猪木(9分27秒 体固め)浜口
3本目:木村(4分37秒 リングアウト)猪木
本来、名勝負というにはためらわれるキワモノ試合ですが、
私にとっては興味深い試合です。
この当時、猪木は春に半月板損傷、夏には糖尿病を患い、
年2回も長期欠場するなどコンディション的には最悪の時期でした。
実際、前年と比較すると上半身の筋肉の衰え、足の細さは際立っており
格闘家としての猪木はこの年で終わっていたとも言えます。
そういえば延髄斬りをフィニッシュとして多用し始めたのもこの頃
からですね。
さてそんな状況で組まれたこの変則ハンデキャップマッチ。
この試合は春に手術した膝を再度負傷したということで
猪木の膝を国際軍団が執拗に攻め、猪木が耐えるという展開が
大きなストーリーラインとなっております。
特に2本目以降はその傾向が顕著で木村、浜口が執拗に
膝攻めを繰り返し、結局力尽きた猪木がロープに足を絡めて
リングアウト負けというベタな結末となっております。
なんでそんな試合を名勝負として挙げたのか?
それは1本目のグラウンドレスリングの素晴らしさにあります。
糖尿でコンディションを崩してからの猪木はすっかりグランドを
見せることが少なくなっていました。
この頃の試合パターンはほとんど相手の技を受けてたまにナックル
で反撃、最後は延髄斬りでフィニッシュというパターンだったと思います。
それが突然この試合の一本目で後年のUWFのような
グラウンドレスリングを復活させたんですね。
今見ても一本目の流れるようなマット捌きは素晴らしいです。
特に首を取りにきた寺西をひっくり返して十字を決める動きは秀逸。
十字の決まり具合も非常に厳しく、寺西に何か悪意でもあるのか?
と一瞬勘ぐってしまいます(^^;。
そういえばこの試合の再戦でも寺西は顔面蹴り→スリーパーで半失神→
ねじ切るようなコブラとえげつない攻めを受けてましたね。
やっぱり格の違いを見せ付けるためだったのかな?
とにかくこの試合、レフリー山本小鉄の切れの良いタックル、
国際軍団の切なさ、観客の異常な熱狂ぶり等々今見ても楽しめる試合です。
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コメント
投稿者:kimura 2006/4/10 1:54
この一戦、私も好きです。
pasinさんの指摘の通り、1本目の猪木のグラウンドの流れは芸術
的です。寺西選手への攻めが厳しいのは、多分、認めていたんで
しょうね。国際軍団については、猪木さん、仕打ちはともかく
(あれはイジメだと猪木さん、はっきり言ってました。笑)かな
り高い評価をしていましたから。アントニオ猪木のサディス
ティックな魅力を存分に引き出したという意味では、国際軍団は
ジェット・シン以来でした。
この一戦における猪木さんのUWFを彷彿させるスタイルは、pasin
さんも指摘しているようにコンディション不良に起因していると
思います。たぶん、猪木さんはプロレスができなかった。そのた
め、グラウンドを中心にした格闘技的な闘い方をやらざるをえな
かった。そういうことではないでしょうか?
今でこそ、UWFスタイルはプロレスよりシビアで、さらにその上
に格闘技が位置していますが、当時、そんな見方は存在しません
でした。グレイシーが出て来たとき、マウントパンチを見て誰も
が「それでいいの?」と思ったように、UWFも登場時には新日本
の選手達が皆「あんなの道場でやってるよ」と口を揃えて言って
いた憶えがあります。
つまり、猪木さんもこの試合で見せたのは「道場の動き」であっ
て、当人にしてみれば本当のところそんな試合を見せるのは不本
意だったような気がします。それが厳しい極め方をした理由でも
あるのではないかと。
この試合、キワモノに見えて、案外、コロンブスの卵だったのか
もしれませんよ。
投稿者:pasin 2006/4/10 23:46
>kimuraさん
なるほど。流石木村さん、読みが深いですね。
>この試合、キワモノに見えて、案外、
コロンブスの卵だったのかもしれませんよ。
変則タッグの再戦もスリーパーで落としたり、顔面蹴りを放ったり
所謂キラー猪木的な動きが目立ちますね。
なるほど、国際軍団との絡みを経て、キラー猪木スタイルが確立されたというわけですね。
おかげで猪木さんのレスラー生命は延命されたわけでまさにコロンブスの卵だったと。